「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」レビュー お約束の日本の喜劇映画


image: 山田洋次監督作品『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』公式サイト

シリーズ3作目となる「家族はつらいよ」公開中(2018年6月12日現在)

平田家の面々に久しぶりに会ってきました。
橋爪功さん演じるお祖父ちゃんは、相変わらずひねくれた爺さんですし、西村まさ彦さん演じる長男はシリーズを重ねるごとに親父に似てきています。次男夫婦の妻夫木聡さんと蒼井優さんは、優しく誠実な心を持っていて、長女とその旦那はカカア天下の愛妻家夫婦。
それぞれのキャラクターを非常にわかりやすく、悪い言い方をすればしつこいくらいステレオタイプまっしぐらに、描き分けています。しかしそれが懐かしさを感じさせ、日本の原風景を見るような気持ちで、古い友人に会うような気持ちで、毎回この映画は観てしまうので、簡単なあらすじと一緒に感想を紹介したいと思います。

登場人物紹介は公式サイトをご覧ください。

あらすじ

今回の物語は《主婦への賛歌》ということで、長男・幸之助の妻・史枝さん(夏川結衣)の物語です。平田家一のしっかり者で、育児と家事と家計のやりくりとで、一家を陰ながら支える史枝さん。ある日、彼女が家の仕事をこなしている最中、疲れが溜まっていたのか、ふとウトウトしてしまい、その間に泥棒に入られ、彼女のへそくりが盗まれてしまいます。
出張先から帰ってきた夫の幸之助は、泥棒に入られたことで凹む史枝さんを気遣うことなく、彼女がへそくりを貯めていたことに激怒し「俺が稼いできた金をピンハネしていた!」と自分の妻を責め立てると、バカな夫のこの言葉に、結婚以来ずっと自分を殺し我慢してきた史枝さんは不満が爆発し、家を出て行ってしまいます。
家のことを全て史枝さんに任せっきりだった平田家の面々。唯一の家事経験者のお祖母ちゃんはこのタイミングで腰を痛めてしまい、動けない!こうして祖父ちゃん、親父、ふたりの息子の平田家の男たちは、お母さんのいない日々に奮闘していくことになるのでした。

相変わらず、お約束が心をほっとさせてくれる山田洋次監督作品

本作でシリーズ3作目となった『家族はつらいよ』ですが、寅さんの『男はつらいよ』のようにお約束が出来つつあります。
ひねくれ祖父ちゃんの悪口を本人がいないところで花を咲かせていると、本人が登場したり、中嶋朋子さんと林家正藏さん演じる長女夫婦の早とちりで慌てふためく様子、吉行和子さん演じるお婆ちゃんの笑顔で祖父ちゃんに釘を刺す言葉とそれにビビる祖父ちゃんなど、観る人によっては「また同じことをやってる」と思う人もいるかもしれません。でもそのお約束が観たい人にとっては「ああ、またこの家族に会いに来たな」「またこの人たちバタバタしてて仲良しだな」と思わせてくれるのでした。
シリーズ第1作の頃は、作りすぎていて「今時の若者でこんな話し方するやつなんかいないだろ」と思った妻夫木聡さんと蒼井優さんも、このふたりはこれでいいのだと思うようになってきたし、所々入る彼らの素のような話しぶりが、また笑いを誘います。

《主婦の労働》に対する世の男たちの考え方という「逃げ恥」でも取り上げられていたテーマがあり、女性が見ると余計に共感出来るポイントが多くあると思います。
しかし今でこそイクメンや、男性の家事などについて、見直されてきましたが、改めて夫婦のあり方や主婦のありがたみなどの認識を見つめ直すためにも、男性こそが観るべき映画なのかもしれません。

正直、映画館に観に行くと客層は若く見積もっても平均年齢50歳オーバーな映画ですが、年齢層が高い人たちほど、映画館でよく声を出して笑います。劇場の中が賑やかになり、みんなで一緒にひとつの映画を観ていることが実感出来る作品なので、若い人にも是非観て欲しいシリーズです。

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