『ワンダー 君は太陽』は全ての人に観て欲しい


image: GALLERY|映画『ワンダー 君は太陽』公式サイト – キノフィルムズ

単なる感動作ではない感動作『ワンダー 君は太陽』

6月15日より公開している映画『ワンダー 君は太陽』。遺伝子の疾患で、人とは違う顔で生まれてきた少年・オギーを主人公とする感動作です。
一言で使いやすいから「感動作」という言葉を使いましたが、単なるお涙頂戴の障害者の映画ではなく、今後自分が親になった時「こんな親になりたい」とか「子どもにはこんな友達を持って欲しい」と思わせてくる映画でした。子どもには小学校の道徳の時間に観させたい映画です。

あらすじ

10歳の少年・オギーは、遺伝子の疾患で人とは違う顔を持って生まれてきた男の子。これまで27回もの手術を受け、学校にも通ったことがなかった。いつもフルフェイスのヘルメットを被り、人と接することを避けてきたオギーだったが、母親の強い提案で、遂に学校へ通うことになる。
最初は、すれ違う生徒みんなに振り向かれ、好奇の眼差しを向けられ、しまいには彼に触るとペストが感染すると言われ、避けられてしまうオギーだったが、少しずつ本当の自分を出し、持ち前の頭の良さや面白さ、前向きな性格をもって、かけがえのない友人と出会い、家族との絆を深め、ヘルメットを脱ぎ捨てて世界に足を踏み出すのだった。

宇宙が好きで、「スター・ウォーズ」が好きで、優しくて厳しいお母さんと、いつも笑わせてくれる楽しいお父さん、オギーのことを心から愛しているお姉ちゃんと、親友の愛犬がいる普通の少年が、世界を変える物語。

優しい人々の名セリフの数々

出てくる人の殆どが良い人たちです。疾患を持つ少年の物語ということで、いじめを扱っているため、嫌な奴らももちろん登場しますが、オギーの両親や姉のヴィアを始め、オギーの親友となったジャック・ウィルや学校の先生達、ヴィアの友人達まで、みんな優しい心の持ち主です。その優しさを引き出しているのがオギー自身で、彼の性格や人柄が周囲の人々を優しくしているのです。
オギーの学校の校長先生のセリフで「オギーの外見を変えることは出来ないのだから、我々の彼を見る目は変えなくては」という言葉がありましたが、それはオギーのことを同情の目で見ろという意味ではなく、彼の良い部分を、外見というフィルターで隠すなという意味なんでしょう。

またオーウェン・ウィルソン演じる父親のネートも、本当に素敵なお父さんです。妻を愛し、子ども達を愛し、いつも冗談で家族を笑わせるユーモアを持つネートが、オギーの登校初日に伝えたのが「授業中に手を挙げるのは1回だけにしなさい。だけど理科の授業は何回手を挙げても良いからガンガンいけ。」「孤立しても、お前はひとりじゃない」というふたつ。
最初の言葉は、他の子達とは違う顔の息子が、目立ちすぎて更に浮いてしまわないように、という現実的なアドバイスと、それでも彼の得意分野で好きな理科ではどんどん羽を伸ばしなさいという、彼の好きなことは伸ばそうという親の思いが感じ取れます。
正直最初の言葉を聞いたときは現実的だけど、冷たい気もすると思ったのですが、その後に続く「孤立しても、お前はひとりじゃない」という言葉が、ネートの父親としての愛をまっすぐに表していて、とても印象的でした。
家族を本当に大切に思いつつ、普段は面白いネートの父親としての姿は本当に「こんな親父になりてー」と思わせるものでした。

学校でのあるあるを素直に演じた少年少女達が輝いている

オギーの周りの少年少女達もとても素敵です。
特に、ジャック・ウィル。彼を演じたノア・ジュプ君は、もう少し年をとるとめちゃくちゃイケメンな青年になると思います。『ラブ・アクチュアリー』で超絶可愛いサムを演じたトーマス・ブロディ・サングスターが、現在『メイズ・ランナー: 最期の迷宮』などで超絶イケメンに成長しているような感じになるんだろうなーと予想しています。
そんな少年少女ですが、本作で学校あるあるを色々しでかしてくれます。ジャック・ウィルは、クラスの中でも上位にいる友達に合わせて心にもないことを言ってしまって親友を傷付けてしまったり、ヴィアの親友だったミランダは、夏休みデビューをしたせいで引っ込みがつかなくなり、親友のヴィアと疎遠になったり。。
学校の友人関係はひとりだけではなく、色々とある上に、自分にとって何が一番大切なのか、10代の時は見失いがちになります。その結果、不本意な方向に物事が進んで、後で泣きそうになる程後悔することもよくあります。
そんな10代の悩みを真正面から素直に演じた、ジャック・ウィル役のノア・ジュプ君とミランダ役のダニエル・ローズ・ラッセルさんは、本作で主人公達の親友という、筆者が一番好きなポジションで一際輝いていましたし、その綺麗なルックスも含めて今後更に注目したい役者さんです。

出来るだけ多くの人に観て欲しい

Netflixオリジナルドラマの『13の理由』ではヒロインの女の子ハンナを自殺に追い込む程の悲惨ないじめが描かれていましたし、TVアニメ『3月のライオン』でも、いつも明るく元気だった川本三姉妹の次女・ひなたちゃんを追い詰めたいじめが描かれていました。それらを含むあらゆるいじめが、人を思いやる心を失った、もしくはそれを若気の至りで包み隠してしまった人たちによる行為だと思います。
この映画のもう一つ印象的な台詞に、オギーの担任のブラウン先生の「人をいたわれ。みんなも闘っている」というものがありました。誰もがみんな何かと闘っていることを理解し、お互いをいたわることが出来たなら、きっとオギーの周りの人たちのように、優しくなれるんじゃないかなー、なんて思わされる作品でした。

6月15日(土)より、公開中です。
『ワンダー 君は太陽』公式サイト:こちら

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